問題
長さ $l$ の単純支持梁において、左端Aをピン支持、右端Bをローラー支持とします。梁の中央($x = l/2$)に時計回りの集中モーメント $M_0$ が作用しています。梁の曲げ剛性は $EI$(一様)とします。
左端Aから右方向に $x$ 軸を取るとき、以下を求めてください。
- 反力 $R_{\mathrm{A}}$, $R_{\mathrm{B}}$
- 最大たわみ $\delta_{\max}$
解答
反力の算出
ピン支持Aには鉛直反力 $R_{\mathrm{A}}$、ローラー支持Bには鉛直反力 $R_{\mathrm{B}}$ が発生する。外力はモーメントのみ(鉛直力なし)なので、反力は偶力として現れる。
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A点まわりのモーメントの釣り合い
反時計回りを正とする。中央に時計回りの $M_0$ が作用し、B端の鉛直反力 $R_{\mathrm{B}}$ が距離 $l$ で反時計回りモーメントを作る。
$$R_{\mathrm{B}} \cdot l - M_0 = 0 \quad \Rightarrow \quad R_{\mathrm{B}} = \frac{M_0}{l}$$ただし力の方向を確認すると、$R_{\mathrm{B}}$ は下向きに作用する($M_0/l$ 下向き)。
- B点まわりのモーメントの釣り合い $$-R_{\mathrm{A}} \cdot l + M_0 = 0 \quad \Rightarrow \quad R_{\mathrm{A}} = \frac{M_0}{l} \quad \text{(上向き)}$$
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鉛直方向の力の釣り合い(検算)
$$R_{\mathrm{A}} - R_{\mathrm{B}} = \frac{M_0}{l} - \frac{M_0}{l} = 0$$
外力に鉛直力がないので、反力の合計がゼロとなり整合する。
特異関数法
たわみの微分方程式 $-EI\,y'' = M(x)$ を直接積分します。特異関数(Macaulayの括弧)を使うことで、モーメント荷重の作用点で場合分けせずに、1本の式で梁全体のたわみを求めることができます。
Macaulayの括弧(特異関数)
特異関数 $\langle x - c \rangle^n$ は次のように定義されます:
$$\langle x - c \rangle^n = \begin{cases} (x - c)^n & (x \ge c) \\ 0 & (x < c) \end{cases}$$積分公式:
$$\int \langle x - c \rangle^n \, dx = \frac{\langle x - c \rangle^{n+1}}{n+1} \quad (n \ge 0)$$特異関数を使うと、荷重作用点の前後で区間分けせずに、せん断力・曲げモーメント・たわみを1本の式で統一的に扱えます。
たわみ
たわみ $y$ は下向きを正とします。特異関数を使うと、区間分けせずに微分方程式を1本の式で積分できます。
曲げモーメント
$x = l/2$ で時計回りのモーメント $M_0$ が作用するので、特異関数を使って:
$$M(x) = \frac{M_0}{l}\,x - M_0\langle x - l/2 \rangle^0$$- $x < l/2$: $\langle x - l/2 \rangle^0 = 0$ なので $M = M_0 x / l$
- $x > l/2$: $\langle x - l/2 \rangle^0 = 1$ なので $M = M_0 x / l - M_0 = M_0(x/l - 1)$
微分方程式の積分
$$-EI\,y'' = M(x) = \frac{M_0}{l}\,x - M_0\langle x - l/2 \rangle^0$$1回積分してたわみ角:
$$-EI\,y' = \frac{M_0}{2l}\,x^2 - M_0\langle x - l/2 \rangle + C_1$$もう1回積分してたわみ:
$$-EI\,y = \frac{M_0}{6l}\,x^3 - \frac{M_0}{2}\langle x - l/2 \rangle^2 + C_1 x + C_2$$境界条件
$y(0) = 0$ より: $\langle 0 - l/2 \rangle = 0$ なので $C_2 = 0$。
$y(l) = 0$ より:
$$0 = \frac{M_0}{6l} \cdot l^3 - \frac{M_0}{2}\left(\frac{l}{2}\right)^2 + C_1 \cdot l = \frac{M_0 l^2}{6} - \frac{M_0 l^2}{8} + C_1 l$$ $$C_1 l = -\frac{M_0 l^2}{6} + \frac{M_0 l^2}{8} = -\frac{M_0 l^2}{24}$$ $$C_1 = -\frac{M_0 l}{24}$$たわみの式
$$-EI\,y = \frac{M_0}{6l}\,x^3 - \frac{M_0}{2}\langle x - l/2 \rangle^2 - \frac{M_0 l}{24}\,x$$ $$\boxed{y(x) = \frac{M_0}{24EIl}\left[l^2 x - 4x^3 + 12l\langle x - l/2 \rangle^2\right]}$$最大たわみの位置
左半分($0 \le x < l/2$)では $\langle x - l/2 \rangle = 0$ なので:
$$y(x) = \frac{M_0}{24EIl}\left(l^2 x - 4x^3\right)$$$y'(x) = 0$ とおく:
$$\frac{M_0}{24EIl}\left(l^2 - 12x^2\right) = 0 \quad \Rightarrow \quad x^2 = \frac{l^2}{12}$$ $$x = \frac{l}{2\sqrt{3}} \approx 0.289\,l$$最大たわみの値
$x = l/(2\sqrt{3})$ を代入:
$$l^2 x - 4x^3 = l^2 \cdot \frac{l}{2\sqrt{3}} - 4 \cdot \frac{l^3}{24\sqrt{3}} = \frac{l^3}{2\sqrt{3}} - \frac{l^3}{6\sqrt{3}} = \frac{l^3}{3\sqrt{3}} = \frac{l^3\sqrt{3}}{9}$$ $$\delta_{\max} = \frac{M_0}{24EIl} \cdot \frac{l^3\sqrt{3}}{9} = \frac{\sqrt{3}}{216} \cdot \frac{M_0 l^2}{EI}$$反対称性により、右半分でも $x = l - l/(2\sqrt{3}) \approx 0.711\,l$ の位置に同じ大きさの逆向きたわみが生じる。
解答まとめ
単純支持梁・中心モーメント荷重の解答
$$R_{\mathrm{A}} = \frac{M_0}{l} \quad \text{(上向き)}, \qquad R_{\mathrm{B}} = \frac{M_0}{l} \quad \text{(下向き)}$$ $$y(x) = \frac{M_0}{24EIl}\left[l^2 x - 4x^3 + 12l\langle x - l/2 \rangle^2\right]$$ $$\delta_{\max} = \frac{\sqrt{3}}{216} \cdot \frac{M_0 l^2}{EI} \quad \left(x = \frac{l}{2\sqrt{3}} \approx 0.289\,l\right)$$補足:せん断力図・曲げモーメント図
せん断力図(SFD)
モーメント荷重は鉛直力を生じないため、せん断力に不連続は生じない。特異関数を使うと、梁全長にわたって:
$$V(x) = R_{\mathrm{A}} = \frac{M_0}{l} \quad (0 \le x \le l)$$曲げモーメント図(BMD)
特異関数を使うと、曲げモーメントは1本の式で:
$$M(x) = \frac{M_0}{l}\,x - M_0\langle x - l/2 \rangle^0$$- $x = 0$: $M = 0$
- $x = l/2$(左極限): $M = M_0/2$
- $x = l/2$(右極限): $M = M_0/2 - M_0 = -M_0/2$
- $x = l$: $M = M_0 - M_0 = 0$
$x = l/2$ で時計回りモーメント $M_0$ により、$M_0/2$ から $-M_0/2$ へ $M_0$ だけ不連続に降下します。
ポイント
- モーメント荷重では鉛直方向の外力がないため、反力は偶力(大きさが等しく向きが反対)になります。$R_{\mathrm{A}} + R_{\mathrm{B}} = 0$ であることを検算で必ず確認しましょう。
- 特異関数(Macaulayの括弧)を使うことで、モーメント荷重の作用点での場合分けが不要になり、1本の式で梁全体を表せます。積分定数も境界条件だけで決まるため、接続条件を考える必要がありません。
- 集中モーメントが作用する点では、せん断力は連続ですが、曲げモーメントは $M_0$ だけ不連続に変化します。集中荷重のときとは逆のパターンです。
- 中央モーメント荷重では、たわみの分布が反対称(奇関数的)になります。そのため中央($x = l/2$)のたわみはゼロとなり、最大たわみは中央の左右に現れます。
- 最大たわみの位置 $x = l/(2\sqrt{3}) \approx 0.289\,l$ は、梁の約3割の位置に相当します。対称荷重では最大たわみが中央に生じますが、反対称荷重ではそうならない点に注意しましょう。